設楽 俊 「白い部屋」
-ART FAIR TOKYO 2017-
2017年3月17日(金)〜19日(日)
東京国際フォーラム
マティスはいう、絵画は一日の仕事で疲れきった現代人の頭脳にとっての心地よい肘掛け椅子や精神的鎮静剤でなくてはならない、と。
そこには、絵画は心休まるためのものであるべきという考えと同時に、その内奥がいわんとすることは、マティスが絵に作家の感情を過度に込めないという信念だった気がしてならない。
今回のアートフェア東京への出品にあたって埼玉画廊とのやりとりで浮かび上がってきたテーマが、「La chambre blanche(白い部屋)」。わたしは設楽と多く語り合う機会に恵まれているが、きまって思うところは、彼が終局目標としているのは、自分の家に飾って心地のよい絵を完成させることだ。柔らかな光の射す、白い部屋に掛ける絵。これまで設楽が求めてきた「白」というのは、白い壁や、絵を邪魔しない白い額といったパレルゴン(絵画に寄添うもの)を前提として、作品の色彩が中心となる世界だった。これが今までの設楽の意識なのに対し、「白い壁に掛ける白い絵を描け」といわれているわけである。彼が過去にそういった作品を描いたことがないわけではないが、マティス、セザンヌ、ド・スタールといったグラン・メートル(偉大な絵画の先生)に私淑する彼が、色彩に限りを与えられてブラン・ド・ブラン(白の中の白)(白ぶどうだけで作られるシャンパンのことでもある)をどう創りあげるのかは、われわれにとっても興味深いものだ。(略)
設楽俊
立軌会同人
1985年埼玉県川口市生まれ
2007年日本大学芸術学部美術学科絵画コース絵画専攻卒業
2009年日本大学大学院 芸術学研究科造形芸術専攻 博士前期課程絵画分野修了
2014年第49回昭和会展優秀賞(日動画廊・銀座)