2019年3月23日(土)—30日(土)
会期中無休

10:00~18:00 (最終日17:00まで)

 

 

 

ごあいさつ

 

 大庭英治氏は1977年から81年まで、フランス政府給費留学生として、国立マルセイユ高等美術学校に学んでいる。東京藝術大学大学院美術研究科油画科(野見山教室)を修了した翌年の事である。その後、フランス、ドイツ、ノルウェー、ロサンジェルス、アイスランド、オーストラリア等、世界各地で展覧会を開催し、国際的に活躍する画家として現在に至っている。
 初めて大庭英治氏の個展を訪れたとき、華やかな色彩に溢れる空間に圧倒された。しばらくその空間の中にたたずむと、どこからともなく色彩のシンフォニーが奏でられているイリュージョンの中にいた。その感覚は、今でもはっきりと鮮明に記憶している。

 

 慶應義塾大学文学部美学美術史学科を卒業した後、パリ国立高等美術学校のクレモニーニ教授のもとで絵の制作をしていた松田千草氏を、恩師・同大学教授前田富士男氏(パウル・クレーの研究者)に紹介を受け、パリで何度も美術館に案内してもらった。画廊を始めた私に、「画家と一緒に美術館を巡るのが1番勉強になりますよ」という勧めがあってのことだった。
 ルーブルやオルセー、ギュスターヴ・モロー美術館などを巡りながら、絵の解説をしてもらった。
 「明度は同じでも暖色と寒色、透明色と不透明色、前に出たり、後退したりするので複雑になります。その上、同じ色でも周りの色によって鮮やかに見えたりくすんで見えたり、下に塗った色によっても、描き方で厚く塗るか薄くのばしてグラッシをするかによって、ヴァルールが変わってきます。……絵画空間を色によって立体的に組み立てていくとき、ヴァルールが合っていないと、造形的ではなく装飾的になってしまいます。画学生の私は、今、写実的な具象絵画を重ねて描きながら、専らヴァルールの把握に努めています。色と色との微妙な響き合いに気づくことは、写実を越えた絵画空間を表現するための一つの要素になります。目に見える光の強さを表すのに、絵の具の白は弱いし、輝きを表すのに、絵の具の黄色も弱く思えます。でもヴァルールが合えば、色を効果的に使うことで絵は内側から輝くような気がします。今、私は色彩の中に、目に見えるものを何も描きたくないので、私の記憶から制作しています。記憶の中のイメージをより鮮烈に描けたらと思っています。」

 

 マチスの『赤いアトリエ』の前で、彼女が語っていたことが鮮明に思い出された。
大庭英治氏の創り出す絵画空間には、作家の記憶のイメージと色彩のイリュージョンが溢れているのを改めて認識し、未だ作家がその旅路の途中であることを確信した。
 そして、その旅路の途中でめぐり逢い、その先を見てみたいという想いに駆られている。

 

                                                埼玉画廊 岡村睦美


立軌会同人 日本美術家連盟会員 日本大学芸術学部教授

 

1950年 宮城県白石市に生まれる
1976年 東京藝術大学大学院美術研究科油画科[野見山教室]修了
1977年 フランス政府給費留学[国立マルセイユ高等美術学校に学ぶ]81年帰国
1979年 個展「ヌーベルギャルリー」(フランス・マルセイユ市文化部企画)
2017年 宮城県芸術選奨受賞