JR川口駅東口デッキ直結 TEL:048-271-5088

OPEN: 10:00 - 17:30

日・祝・月定休(展覧会中は不定休)

アクセス

2023年1月21日(土)-26日(木)
[会期中無休]

開場 10:30-18:30
会場 川口総合文化センターリリア 1F 展示ホール

《序の舞(祥)》 F150 油彩 2019年制作
《大滝(虹の彼方)》 F200 油彩 2022年制作
《如月》 F50 油彩 1988年制作(第23回昭和会賞)
《富士(紫映)》 F120 油彩 2020年制作

 

<個展に寄せて>          野見山 暁治 ( 1920 〜 )

 

 かつて私は、十二年ほど東京芸大に勤めたことがあるが、安達時彦君はその折の学生。たしか最上級生であったかと思います。
 赴任して間もなく、世界中の若者が、平穏な世情に倦きたらず暴れ出して芸大の学生たちも今までの秩序が保てなくなり、あっけなくこの大きな波に呑み込まれていた。
 二、三年くらいだったか、嵐のような騒動が収まると侘しくも人間相互の信頼や愛情はうすれ、絵の具の匂いにまみれたアトリエが寒々とした大きな洞窟みたいに映ったものです。
 当然のこと、その時代を過ごした、かなりの学生たちは何を得ることもなく、学窓を去っていったものと思います。
 茫然とする暇もなく、又しても一気に海の向こうから、新しい絵画理念、それに伴う未開発の技法なり、材料が、次々に押し寄せてくる。
 若者は時代への反応が敏感で、未知の情報をいち早く消化しようとそれぞれが追い込まれることになる。  安達君はあまり目立たない学生というか、表面だって動き回る人柄ではなかったとみえて、学校が静かになった教室で、私は初めて向き合った。当時としては、そういう学生も逆に、珍しいことではなかったか。
 空手を長い間、やって来たらしい。どういうスポーツなのか、私はその真髄は知らないが、とても形を重んじる。重んじるというより、形から入ってゆくもののように思える。形の完璧さを目指して、よりその真髄に没入してゆく過程こそが安達君としては大事なんだろう。会得というか。
 我が国の伝統芸能。能の、あの不思議が沈黙の世界に惹かれた安達君は、時代を経て、私たちの祖先が作りあげ、受け継いできたあの形の見事さ、あの完成度を願っているのだろう。
 近作に、日本の女性の姿を選んでいるのは、大きく変わったはずだが、これも私たちの祖先が示してくれた情緒、肌触り、香りを、あの伝統芸能と同じ形態の暗示に近づけようとしている。
 安達君は一見すると、怖そうな顔に見られるのは困るだろうな。本人が作った顔ではない。恐ろしく照れ屋だと思う。
こう言ってもいいか、実は優しい気弱な男なんだと。

 

                                    東京芸術大学名誉教授/文化功労者・文化勲章

 

 

 

<故郷での回顧展>          安達 時彦

 

 懐かしい私の原風景であった、鋳物工場のキュ・ポラと芝川の匂いは今は何処にも探せない。
 ハイテクノロジーな香り溢れる街へ様変わりしていた。
 此の度 埼玉画廊とのコラボレーションにより、故郷での回顧展、しかも喜寿を記念しての開催を出来ることは、私にとって明日からの道標として大切な展覧会となります。
 高等時代からの作品を含め、独立展に出品した大作を中心に近年描き溜めた中小作品も同時に100点余の展示を致します。
 お忙しい中恐縮ですが、何卒ご高覧、ご指導を賜りますよう御願い致します。

 


安達 時彦(あだち ときひこ)
独立美術協会会員、日本美術家連盟委員

 

1945 埼玉県川口市に生まれる
1962 川口市立十二月田中学校卒業
1964 埼玉県立浦和西高等学校卒業
1969 東京藝術大学美術学部油画科卒業(山口薫教室)
1971 同大学院美術研究科油画専攻修了(野見山暁治教室)
1976 美術研修のため渡欧
1988 第23回昭和会展にて<昭和会賞>受賞
2009 個展 ~間の華~(日本橋髙島屋)
2017 個展 ~序の舞~(日本橋髙島屋)
2020 個展 (川口・埼玉画廊)
2021 個展 ~描くことは生きること~(日本橋髙島屋)
2023 安達時彦喜寿記念回顧展(川口総合文化センターリリア展示ホール)